東大、土星の衛星に海底熱水が存在することを発見 太陽系で地球外生命の可能性

2015年3月14日 16:28

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今回明らかになったエンセラダス内部の様子。南極付近の地下に岩石コアと触れ合う広大な地下海が存在しており、海底にはおそらく広範囲に熱水環境が存在している。南極付近の割れ目から地下海に由来したプリュームが噴出している (画像提供NASA/JPL)

今回明らかになったエンセラダス内部の様子。南極付近の地下に岩石コアと触れ合う広大な地下海が存在しており、海底にはおそらく広範囲に熱水環境が存在している。南極付近の割れ目から地下海に由来したプリュームが噴出している (画像提供NASA/JPL)[写真拡大]

  • カッシーニ探査機によって撮影された、エンセラダスの南極付近の割れ目から噴出するプリュームの写真(画像提供NASA/JPL)

 東京大学の関根康人准教授らによる研究グループは、土星の衛星エンセラダスの地下海に海底熱水環境が存在することを明らかにした。原始的な微生物を育む可能性のある環境が、地球以外の太陽系天体に現在も存在することを初めて実証したもので、地球外生命の発見に向けた大きな前進になるという。

 土星の衛星エンセラダスは直径500キロメートル程度の天体で、南極付近の地表の割れ目から地下の海水が間欠泉のように宇宙に噴出している。また、重力データから、南極周辺の地下に広大な地下海が存在し、岩石からなるコアと接していることも明らかになっている。

 今回の研究では、カッシーニ探査機に搭載されたダスト分析器を用いて、ナノメートルサイズの岩石の微粒子を調べたところ、ほぼ純粋なシリカからなること、そしてこれらが土星を周るエンセラダスの軌道周辺に存在していたことが分かった。

 さらに、エンセラダスの間欠泉で観測される二酸化炭素やアンモニアを含む水溶液と、初期の太陽系に普遍的に存在していたかんらん石や輝石の粉末を用いた熱水反応実験を行ったところ、エンセラダス内部の反応でナノシリカ粒子が生成するためには、摂氏90度以上という熱水環境が必要であることや、熱水のpHは8~10のアルカリ性であることが明らかになった。

 これらを含む様々な研究成果にも基づき、研究グループはエンセラダスの海底に地球の海底熱水噴出孔に似た熱水環境は、おそらくエンセラダスに広範囲に存在しており、それが現在でも活発に活動しているという内部モデルを構築した。

 これまでは火星に集中していた太陽系生命探査だが、エンセラダスという新たな候補天体を得たことで、地球外生命探査は今後大きな広がりを見せることになると期待される。

 なお、この内容は「Nature」に掲載された。

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