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【コラム 山口利昭】社外取締役候補者が気分を害するおそれのある定時株主総会(?)
【3月9日、さくらフィナンシャルニュース=東京】
今年は3月決算会社の定時株主総会(6月ころ)の準備が例年以上に忙しそうですね。総会担当者や監査役の皆様はまさに「有事」の状況にあるのではないでしょうか。おまけに5月下旬にはコーポレートガバナンス・コード(原案)が確定するとなっては、上場会社の場合にはパニックになってしまうところも出てくるかもしれません。
本日はホントにたいしたお話ではないのですが(忙しい方はスルーしてください)、会社法や会社法施行規則の一部改正に伴い、関係者の方々は改正会社法上の行為規範や開示規範(書類の記載事項のルール)がいつから適用されるのか、ということに配慮しなければなりません。ところで、いろいろと考えてみますと「これって社外取締役候補者が株主総会で気分を害する事態にならないか?」と不安を抱くところがありそうです(もし私の条文解釈が誤っていたら削除します-笑)。
特定監査役会設置会社が、事業年度末に社外取締役を置いておらず、新たに定時株主総会で社外取締役の選任を予定している場合、事業報告には「(当該事業年度において)社外取締役を置くことが相当でない理由」を記載し、また(参考書類の記載は不要ですが)株主総会では「社外取締役を置くことが相当でない理由」を述べなければならないとされています(経過措置に関する条文からみると、そうなります)。立案担当者の解説では「(そのようなケースでは)理由は簡潔でもよい」と述べておられるそうですが、それでも理由の説明が不要とはされていません。とりあえず何か合理性のある理由を述べないと取締役の選任決議取消事由になってしまう可能性あり・・・などと言われますと、「テキトーに」と軽く考えることもできないですよね(^^;
ということは(普通に考えると)、新たな社外取締役候補者が出席している株主総会の場における議長の説明では「うちの会社は社外取締役がいると企業価値を害する、つまり百害あって一利なしだ。しかし法律が入れろというのでしかたなく一人入れることにしました」と株主には聞こえてしまうのではないでしょうか。いや、株主だけでなく、社外取締役候補者にもそのように聞こえてしまうのではないかと。まぁ、社外取締役候補者の方には事前に「こんなもんです」と説明できますが、一般株主にとっては「なんだ、この候補者は何もしないことが会社から期待されているのか?」と理解されてしまうのでは、と。
これはよほど説明に気をつけないと、株主や社外役員候補者に誤解を招くように思います。「今年の総会で社外取締役を入れない会社であれば(粛々と理由を説明すればよいので)とくに問題ない」と言われていますが、そのような会社でも社外取締役候補者の選任議案が株主提案として出された場合とかはどうなるのでしょう?別の社外取締役候補者は立てにくいですし、「反対理由」もむずかしいですね。
ともかく、新たに会社提案として社外取締役選任議案を出す会社まで、なぜ社外取締役を選任する総会で「置くことが相当でない理由」を述べないといけないでしょうか。行為規範の要件効果論による「理屈」としてはわかるのですが、現場の空気としてきわめて不適切な状況になってしまうように思いますが、いかがでしょう。それとも「今の今まで、当社は社外取締役は有害だと思いましたが、この候補者の方に接して考え方が変わりました!当社の考え方が間違っていました。企業価値の向上に資するものです!」とでも説明するのでしょうか?【了】
山口利昭(やまぐち・としあき)/山口利昭法律事務所代表弁護士。
大阪府立三国丘高校、大阪大学法学部卒業。大阪弁護士会所属(平成2年登録 司法修習所42期)。現在、株式会社ニッセンホールディングス、大東建託株式会社の社外取締役を務める。著書に『法の世界からみた会計監査 弁護士と会計士のわかりあえないミソを考える』 (同文館出版)がある。ブログ「ビジネス法務の部屋」(http://yamaguchi-law-office.way-nifty.com/weblog/)より、本人の許可を経て転載。
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※この記事はSakura Financial Newsより提供を受けて配信しています。
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