【コラム 山口利昭】ガバナンス改革-有事にこそ監査役の積極的対応に期待します

2015年2月5日 10:27

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記事提供元:さくらフィナンシャルニュース

【2月5日、さくらフィナンシャルニュース=東京】

 毎年恒例の日本監査役協会リスクマネジメント講座の全国ツアーが来週から始まります。「近時の事例から学ぶ監査役の有事対応2015」ですが、地元大阪の2日間で始まり(いずれも満席でして、どうもありがとうございます)、2月中旬には名古屋、福岡と回り、3月は東京で3日連続(明治記念館、東京プリンス2日)となります。体調管理に配慮しまして、また元気にお話させていただくつもりです。

 さて、この1年はガバナンス改革という社会の変化もあり、また監査役さんにとって興味深い事件や裁判が多かったので話題はてんこ盛りですが、この2日間(2月2日、3日)の適時開示をみましても、複数の監査役さんが同時に辞任される会社が続きました。まさに有事対応の場面です。いずれの会社も経営権争いに絡んだものと思われますが(そのうち1社は年末の臨時株主総会で決着がついたものと思うのですが)、辞任によっていずれも監査役の定員数を満たさない状況となり、1社は臨時株主総会において株主側が3名の監査役追加選任を請求したようで、もう1社は仮監査役の選任申立てを行う予定している、とのことです。

 経営陣と意見が合わない、といったことであれば、次の株主総会終結時に辞任することで折り合いをつけることも考えられるところですが、次の監査役さんも決まらないままに、複数の監査役さんが同時に辞任する、というのはよほど深い理由があるのでしょう(辞任理由は「一身上の都合」ということですが)。リリースで示されているように、たとえ一方的に辞任をしたとしても、次の監査役(仮監査役)さんが決まるまでは「権利義務監査役」として必要最小限度の監査業務を継続しなければなりません(継続しなければ善管注意義務違反に問われるおそれがあります)。

 監査役に就任した経緯や社内人事、大株主との関係等、社内の事情も知らないまま軽々には申し上げられませんが、有事にこそ監査役さんが中心になって対応しなければならないこともあるように思います。なぜなら平時こそ取締役さん方にとって「経営判断原則」が適用され、法的な責任が問われるような事態が想定されないものの、有事となれば状況は一変し、取締役さんの利益相反、開示(虚偽記載)、インサイダー情報の不適切な取扱い、不公正ファイナンスその他会社法、金商法上のルール違反行為のリスクが急激に高まるからです。監査役さん方にとっては、有事こそ経営監視役として株主の受託責任を履行しなければならないわけでして、そこで降りてしまうというのは株主にとっても、会社にとっても痛いはずです。

 このたびの改正会社法施行規則(案)をみても、三様監査(内部監査、会計監査人監査、監査役監査)の扇の要が監査役さんです。詳しくはまた研修の際に申し上げますが、監査役さんの監査環境整備は一般投資家への開示対象となり、また機関投資家との対話の内容になると思います(その根拠はご説明いたします)。有事にこそ、会社や取締役が不幸に陥らないための監査役さんの知見や行動が求めれるはずです。たとえ有事が到来せずとも、有事のリスク管理を見据えた平時の監査環境整備が求められる時代だと考えています。【了】

 山口利昭(やまぐち・としあき)/山口利昭法律事務所代表弁護士。
 大阪府立三国丘高校、大阪大学法学部卒業。大阪弁護士会所属(平成2年登録 司法修習所42期)。現在、株式会社ニッセンホールディングス、大東建託株式会社の社外取締役を務める。著書に『法の世界からみた会計監査 弁護士と会計士のわかりあえないミソを考える』 (同文館出版)がある。ブログ「ビジネス法務の部屋」(http://yamaguchi-law-office.way-nifty.com/weblog/)より、本人の許可を経て転載。

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