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【コラム 山口利昭】JA全中改革-監事監査の重要性を忘れていませんか?
【1月15日、さくらフィナンシャルニュース=東京】
年明けから多くのブログ等で取り上げられているJA全中(全国農業協同組合中央会)の農協監査権限廃止問題ですが、全中の会計監査権限が廃止され、公認会計士監査に移行することだけが専ら話題になっています(たとえば毎日新聞ニュースはこちら(http://mainichi.jp/select/news/20150107k0000m020093000c.html)です)。一方で業務監査権限も廃止されることになりそうですが、こちらはあまり話題になっていません(農林中金さんが外部監査としての業務監査権限を受け持つ、という報道もされています)。このあたり、やはり監事監査(監査役監査)というものが、世間では話題になりにくいことを如実に物語っていますね。
平成4年の農協法改正により、農協組織のガバナンスは会社法上の株式会社組織とほぼ同じようなものになりましたので、会社法上の監査役に匹敵する常勤監事(常勤監査役)、員外監事(社外監査役)さんが各農協にいらっしゃいます(もちろん規模にもよりますが・・・)。私は過去にいくつかの都道府県JA中央会のお手伝いをしたことがありますが、農協監事監査の指導なども熱心になさっておられて、これが廃止されると各農協の常勤監事さんはお困りになられるのではないかと懸念しております。農協さんの中にはコンプライアンス意識にやや問題がある理事さんがいらっしゃるところもありそうでして、監事さんのレベルが高いのであればよいのですが、そうでないところは外部監査としての中央会監査にも意義があると思います。
農協監事といえば、当ブログでも2009年にご紹介したとおり、監事さんの監査見逃し責任を厳格に認めた大原町農協事件最高裁判決が有名です。農協理事長の暴走を止められなかった監事さんの損害賠償責任を認めた判決(逆転判断)です。会社法上の監査役と同等の監査権限を有するものといえども、「監事とは何をしたらいいの?昨年までの恒例どおりに監査をしておけばいいの?」といった方もいらっしゃるので、最高裁判決は農協監査実務に一石を投じるものとなりました。ということで、各農協の監事の皆様にとっては全中の(指導を伴う)業務監査には(批判はあるものの)現実的には助かっていたのではないでしょうか。
今後、全中の業務監査が廃止されるとなると、監事監査は一体どうなるのでしょうか?会計監査を担当する公認会計士の方々も、監事さんと連携をする必要があると思いますが、はたして連携するだけの能力が監事さん方にあるかどうか・・・・・、農協ガバナンスの将来を真剣に検討しなければ、ただでさえ不祥事が多いところへ、今後ますます関係者の責任が問われるような金融不祥事が増える気がいたします。ぜひとも全中改革においては、会計監査だけでなく、今後の業務監査の行方にも注目していただきたいと思います。【了】
山口利昭(やまぐち・としあき)/山口利昭法律事務所代表弁護士。
大阪府立三国丘高校、大阪大学法学部卒業。大阪弁護士会所属(平成2年登録 司法修習所42期)。現在、株式会社ニッセンホールディングス、大東建託株式会社の社外取締役を務める。著書に『法の世界からみた会計監査 弁護士と会計士のわかりあえないミソを考える』 (同文館出版)がある。ブログ「ビジネス法務の部屋」(http://yamaguchi-law-office.way-nifty.com/weblog/)より、本人の許可を経て転載。
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※この記事はSakura Financial Newsより提供を受けて配信しています。
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