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【2014年の振り返りと2015年の展望】自動車業界、国内販売がどこまで回復するかが業績を左右
2014年の軽を含めた国内新車販売(推計値)は前年比3%増の約556万4000台で8年ぶりの高水準だったが、それは消費増税前の駆け込み需要で自動車販売が盛り上がった1~3月期があったおかげ。日本自動車販売協会連合会、全国軽自動車協会連合会のデータによると、乗用車(登録車)登録台数は1~3月期は約110万9000台でそれ以前の四半期から突出して多くなり、軽自動車登録台数も約73万4000台だったが、4~6月は登録車は約66万台に、軽も約50万台に激減した。7~9月期は登録車は約80万7000台に回復したが、軽は約50万4000台でほとんど回復していない。10~12月期は登録車は約71万1000台と再び落ち込み、軽が約53万2000台と回復しても埋め合わせることはできなかった。国内販売の不振は依然として続いている。
日本自動車工業連合会の四輪車の国内生産台数も6月までは10ヵ月連続で前年同月比プラスで、1月は14.5%増、3月は14.0%増と大きく伸びたが、7月からは一転マイナスが続き、11月は12.2%減と2ケタのマイナスだった。為替のドル円レートが年間で14.31円、13.6%も円安に進んでいたにもかかわらず、四輪車の輸出がプラスなのは7月の0.1%増だけで、11月は11.5%の2ケタ減少に落ち込んだ。海外生産は年間を通じてプラスだったが、秋からは伸びが抑えられている。
このように統計を見ても、ニュースを振り返ってみても、自動車業界にとって2014年は決して良い年ではなかった。各社の自動運転技術が話題を呼んだり、12月15日ににトヨタ<7203>が世界初の燃料電池車(FCV)の市販車「MIRAI」を発売したような明るい話題もあったが、下半期にはホンダ<7267>の「フィット」などのリコール問題が起き、さらにタカタ<7312>の欠陥エアバッグをめぐるリコール問題がアメリカ連邦議会でも厳しく追及されるなど連日のように報道されて、両社だけでなく自動車業界全体の業績、業績見通しにも影響を及ぼし、それが各社の株価の上昇を阻んでいた。
■「地方創生」が国内新車販売を回復させるか
現状の自動車の世界市場をざっと概観すると、北米は好調、ヨーロッパは不振、アジアでは中国は頭打ち、日本は消費増税後の反動減からの回復待ち、である。しかし好調な北米も年央にはFOMCの利上げが予想され、旺盛な個人消費がいつまで続くか不透明。マイナスになることはないにしても、2014年並みのハイペースの伸びが続くとは考えないほうがいいだろう。北米以外はヨーロッパでも中国でもそれ以外の新興国でも大きく伸びる可能性がほとんどない。つまり2015年は日本の自動車業界にとって「海外で、これまでのようには稼げなくなる年」になる。
そうなると「国内市場でどこまで回復できるか?」が業績、特に利益面では大きなファクターになるだろう。自動車の国内市場が消費増税後の反動減で一進一退という状況から立ち直ることが、自動車メーカーの業績を押し上げ、その株価を押し上げる。
ではどうすれば、自動車は再び売れるようになるのか? よく言われるように「自動車がないと生活できない」のは都市部ではなく地方である。その地方の経済はアベノミクスの恩恵が及ぶのが遅れているので、第三次安倍内閣は「地方創生」を唱え、補正予算の経済対策でも地方に重点配分する。すでに消費税の10%への再引き上げは1年半延期されその懸念が去ったので、2015年は経済対策の効果さえ出れば、地方の企業も個人も、今まで我慢していた自動車の買い替えに動くようになるだろう。それが小型量産車や軽自動車を中心に新車販売台数を押し上げる原動力になる可能性を秘めている。
ただし、それを確実にするには「地方創生」の経済対策の効果がうまく現れるだけでなく、自動車関連の減税や補助金の拡大など、政策面で追加の対策をとる必要もある。
■燃料電池車が「エコカー選好」をより強める
もし追加の政策を行うなら、対象が企業にしても個人にしても、日本のユーザーによく効くのは「エコカー減税」「エコカー補助金」の拡大だろう。なぜなら、日本のユーザーは自動車の環境性能に世界一敏感で、日本人はエコカーが世界一好きな国民だからである。2014年の乗用車の車名別販売台数を見ると、1位はトヨタのハイブリッド車「アクア」、2位はエコカー減税・補助金対象車種のホンダの「フィット」、3位はハイブリッド車のトヨタ「プリウス」だった。
排気ガスがゼロで水しか排出しない「究極のエコカー」燃料電池車は、購入の補助にも水素ステーションにも手厚い政策措置がとられているが、まだ滑り出したばかり。たとえばトヨタは「MIRAI」の年間販売目標を400台に抑えており、それに対しすでに1000台以上のオーダーがあるという。しかし1000台でも2014年の国内販売台数556万4000台と比べると、わずか0.018%にすぎない。
それでも燃料電池車の市販車が街を走り出せば、日本人のエコカーへの関心、環境性能への関心を高める効果は大きいはず。「究極」ではなくてもエコカーの販売促進につながる。たとえて言えば、ある町からサッカーの日本代表選手が出れば、その町のサッカースクールに入る子どもが急増するようなもの。ある町からピアノの世界的コンクールの優勝者が出れば、その町でピアノが急に売れ出すようなもの。「同じ町の人が……」と身近さを感じて、わが子もがんばればサッカーの一流選手や世界的ピアニストになれるかもしれないという「親ごころ」を刺激するからだ。
環境性能に敏感な日本では、燃費のような経済的なメリットだけでなく、「エコカーに乗っている」ことで「環境ごころ」の満足感を持つ人が少なくない。
2014年9月に発売されたマツダ<7261>の小型車「新型デミオ」は国内メーカーの小型車では初のディーゼルエンジン車で、燃費性能は軽油1リットルで最大30キロ走り、軽自動車、ハイブリッド車以外のエンジン車では国内最高水準。マツダ独自の環境技術「スカイアクティブ」を全面的に搭載している。この車種が「2014-2015日本カー・オブ・ザ・イヤー(COTY)」を受賞したところに、日本の自動車市場での「エコカー選好」の強さがうかがえる。
燃料電池車が走り出す2015年は、こんな「環境性能を追求したクルマ」が大きな関心を呼ぶだろう。そこに政府が「エコカー減税」「エコカー補助金」を打ち出せば、まさにタイムリー。それも国内新車販売を回復させる呼び水になる可能性がある。
その点で言えば、小型量産車では2015年中に予定されているトヨタ「プリウス」のモデルチェンジは大いに期待できる。販売台数では「アクア」との〃トヨタHV対決〃に、他社のどんなエコカーが割って入るだろうか? リコール問題を乗り越えた「フィット」か? それとも「デミオ」猛追か? 環境性能だけでなく居住性やデザイン、遊び心でも進境著しい軽自動車の人気もあなどれない。(編集担当:寺尾淳)
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