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【特集】次世代型の微細藻類由来バイオ燃料関連(3)
■主要関連企業の開発動向
次世代型微細藻類由来バイオ燃料の事業化に向けた主要関連企業の開発動向は以下のとおりである。微細藻類にはさまざまな種類があり、各社とも燃料に適した藻類の選定・改良、効率的な大量培養・油脂抽出・精製技術確立の研究開発を進め、低コスト化に取り組んでいる。
■ユーグレナ
東京大学発バイオベンチャーのユーグレナ <2931> は、JX日鉱日石エネルギー(JXホールディングス) <5020> および日立プラントテクノロジー(13年4月、日立製作所 <6501> に吸収合併)と共同で10年から、微細藻類ミドリムシ(学名ユーグレナ)由来のバイオジェット燃料の製造に関して共同研究を進め、18年の技術確立と20年の事業化を目指している。
さらに14年6月には、いすゞ自動車 <7202> と共同でミドリムシ由来の次世代バイオディーゼル燃料「デューゼル(ディーゼルとユーグレナを組み合わせた造語)」事業化プロジェクトをスタートさせた。含有率100%でも車両のエンジンに負担をかけることなく使用できる次世代型バイオディーゼル燃料の18年の技術確立と20年の事業化を目指している。ミドリムシ由来の従来型バイオ燃料を軽油に1%混合させて、いすゞ自動車藤沢工場~湘南台駅間の社員送迎用シャトルバスで公道走行試験も開始した。
ミドリムシ(虫ではなく藻の一種)は体長約0.05mmの微細藻類で、植物性栄養素と動物性栄養素の両方を含む59種類の栄養素を持つことが特徴である。ミドリムシは体内の葉緑素で光合成を行い、体内で油脂を生成して蓄積する。この油脂を抽出・精製してバイオ燃料を製造する。ユーグレナは05年12月、世界で初めてミドリムシの屋外大量培養に成功し、現在は世界で唯一ミドリムシを数十トン規模で商業屋外大量培養し、ミドリムシ入りの食品・健康食品・化粧品を製造販売している。
バイオ燃料に関しては、100種類のミドリムシの中からバイオ燃料に適したミドリムシを選抜、改良して大量培養する。出雲充社長は「石油を一滴も使用することなくミドリムシ100%のバイオ燃料を目指す」として、20年には100万㎡以上の培養施設を稼働させる計画だ。
■IHI
IHI <7013> は、神戸大学発ベンチャーのジーン・アンド・ジーンテクノロジー(G&GT)が発見した緑藻の一種である高速増殖型ボツリオコッカス「榎本藻」をベース原料として、ネオ・モルガン研究所が改良を加えながらバイオジェット燃料の20年事業化を目指している。
13年11月にはIHI NeoG Algae合同会社(藻類バイオ燃料に関する技術開発を目的にIHI、G&GT、ネオ・モルガン研究所の3社で11年8月設立)が、油分を大量に含む藻の屋外での100㎡規模による安定培養に成功した。IHI横浜事業所内に設置した屋外の開放型培養試験プラントで実施した。
屋外開放型の池で増殖に必要なエネルギー源として太陽光だけを利用し、他の藻類や雑菌などに負けない培養法を開発したことで、藻を高濃度で安定的に増殖させることができる点に、世界的に見ても優位な特徴があるとしている。生産する油を「MOBURA(藻+油)」と名付け、次のステップとして量産を見据えて数千㎡規模での培養を実現するための場所の選定と、さらなるコスト削減に向けたプロセス改良を進める方針だ。20年までに従来燃料と同等の価格競争力に引き下げることを目指すとともに、ジェット燃料を中心にさまざまな用途に関する研究も推進する。
■デンソー
デンソー <6902> は、08年4月から慶応大学先端生命科学研究所と共同で、デンソーが海洋バイオテクノロジー研究所から特許を譲り受けた新種の藻「シュードコリシスチス」にCO2を吸収させてバイオ燃料を生産する新しい研究に取り組んでいる。新種の藻「シュードコリシスチス」は、CO2を吸収して光合成で澱粉を作ることに加えて、ディーゼルエンジンに使用できる軽油の成分を含んだオイルも生成し、成長が速く丈夫で培養しやすい特徴を持っているとしている。
■神鋼環境ソリューション
神鋼環境ソリューション <6299> は14年9月、技術研究所内に閉鎖型1立法メートル培養槽を設置し、従属栄養培養方式(生育に必要な炭素を有機化合物の形で生物に与える培養方法)によって、微細藻類ミドリムシ(学名ユーグレナ)の本格培養を開始したと発表した。ミドリムシ由来のバイオマス等のサンプルをキログラム単位で提供する体制が整ったため、バイオ燃料、食品・化粧品、下水処理、化成品などの分野で商品化検討を開始するとしている。
ミドリムシの培養方法は一般的に光合成培養と従属栄養培養があり、閉鎖型培養槽における従属栄養培養は、光合成培養と比較すると単位面積当たりのバイオマス獲得量が数百倍程度となるととともに、気候など外部環境(日光、気温など)に影響されない安定した培養を継続することが可能としている。今後は培養方法についてさらなる改良を進めるととともに、培養槽の大型化に必要な最適設計条件を把握し、15年度に10立法メートル培養槽での大量培養を計画している。10立法メートル培養槽が完成すれば、ミドリムシから得られるパラミロン製造設備としては世界最大レベルになる見込みとしている。
■三井物産
三井物産 <8031> は13年2月、米バイオベンチャーのソラザイム社との間で、藻類を活用した高付加価値油脂製造の研究開発委託契約を締結した。三井物産が総額18億円の研究開発費を4年間に亘って投資し、藻類から高付加価値油脂を製造する技術の確立を目指し、油脂化学品市場(粗原料換算推定2兆円)への供給を推進する計画だ。米ソラザイム社は藻類を使った油脂製造に関して、燃料用途や化粧品用途で技術を確立し商業化に成功している。
■DIC
DIC <4631> は11年8月に、筑波大学と共同で藻類由来のバイオ燃料実用化に向けた共同研究を開始すると発表している。DICは健康食品向けの藻類スピルリナに関して約35年の培養実績を持ち、米国カリフォルニア州の子会社アースライズ・ニュートリショナルズは精製技術や生産効率に秀でたスピルリナ大量培養で知られるとしている。
■ヤマハ発動機
ヤマハ発動機 <7272> と電源開発(J-POWER) <9513> は東京農工大学と共同で、JFEエンジニアリング(JFEホールディングス <5411> )は筑波大学と共同で、微細藻類からバイオ燃料を生産する研究を進めている。またシナネン <8132> は筑波大学などと共同で14年3月、藻類の屋外大量培養実証によって生産した藻類オイルを軽油に混和(混和燃料)し、茨城県つくば市で行われた藻類バイオマス・エネルギー使用の自動車公道走行実証に参画した。(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)
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※この記事は日本インタビュ新聞社=Media-IRより提供を受けて配信しています。
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