【経営者の言葉】川崎近海汽船の代表取締役社長石井繁礼氏に聞く

2014年7月22日 10:08

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記事提供元:日本インタビュ新聞社

――最近の関心事について尋ねると、即座に『内海航路の環境が大きな変化を迎え過渡期だ』とこたえ、『国内海運会社として初の海洋資源開発支援事業への参入』、『主力事業の強化』を挙げる。

――最近の関心事について尋ねると、即座に『内海航路の環境が大きな変化を迎え過渡期だ』とこたえ、『国内海運会社として初の海洋資源開発支援事業への参入』、『主力事業の強化』を挙げる。[写真拡大]

【川崎近海汽船<9179>(東2) 代表取締役社長 石井繁礼】

■内航海運の環境は~変革期への『過渡期』だ

――最近の関心事について尋ねると、即座に『内海航路の環境が大きな変化を迎え過渡期だ』とこたえ、『国内海運会社として初の海洋資源開発支援事業への参入』、『主力事業の強化』を挙げる。

■『海運にとって環境はフォローの風』

 一つ目の「環境が変化する潮目(過渡期)だ」に興味を引かれて聞くと、「最近、特に西日本では、有人車の『16時間走行のたび毎に休憩8時間を厳守』が問題になり、海運業界が活気づいている」と話す。従来から九州・関東間の輸送では陸・海路の競争が繰り返されてきたが、現実として九州・東京間を16時間での安全・安心輸送は難しい。陸路輸送業者にとっては、ドライバー前後2人で走行するトレーラーへの転換か、フェリーなどの海運へ切り替えなど選択肢が限られ厳しい問題である。「当社も新航路など更なる方策を検討する必要があるのでは・・・」といいながら、陸送、海運の競合関係に新しい状況が生まれていることを表現したようだ。そして、東日本でも北海道新幹線建設に伴い「海底トンネル内で新幹線と貨物列車がすれ違う際の風圧対応など、未解決に課題があり、新幹線優先で計画が進行すれば海路輸送の優位性が注目されるなど、『海運にとって環境はフォローの風』だ。」と、『海へのモーダルシフト』の先駆者として航路網の充実、船隊の高速・大型化を進める同社らしい分析に注目した。

■『国内海運会社初の事業進出』本格的活動、新造船就航(2016年2月)から

 二つ目のオフショア支援進出は、昨年10月、オフショア・オペレーション社と合弁で新会社『オフショア・ジャパン』を設立したことに始まるが、「国のエネルギー政策転換や排他的経済水域の安全保障問題など離島確保、資源開発の重要度が増し新事業への需要は増加すると判断し決めた」と前置きし、「海洋資源開発事業は様々なニーズがあり、そのニーズに対応できるオフショア支援船が不可欠だ。新会社は当面の対応として中古船を傭船し4月から運航している。丁度、沖ノ鳥島での海難事故救援を皮切りに順次仕事が入り稼働している。新造船就航(再来年2月)から本格的活動を始めが、国家機関を含め限られた特定の顧客が対象なので、会社の顔を知って貰うことを営業のメインに置く」と現状を語るとともに、「コミッション商売ではなく、本来目指す海底資源の探査、試掘、オイルリグの本格的掘削や洋上風力発電事業」などに目を向け、「技術革新の時代だけに突然の急展開がある世界なので、日本海域で事業展開できることに期待する」と、マーケットの立上りを課題にを挙げ、「買取価格が決まった洋上風力発電事業は急展開が予想され、(1)発電ユニットの設置現場への運送、(2)ユニットのアンカー設置、(3)発電施設のメンテ需要に早期実現を期待している」さらに、「海国だけに経済水域内には多くの島が点在し、護岸工事・プラットフォームの設置など、急がれる事業があり我々の使命となる仕事は多い」をと続け、新事業への思いが伝わる。また、「事業の性格上、邦人以外を使うことには疑問があり、船員数は足りない」と課題も投げかける。

■近海:黒字化へ既存型船隊縮小と省エネ型新造船の投入、内航:運航体制効率化、大型化・省エネ徹底

 三つ目の主力部門の強化では、近海部門の強化への厳しいグローバルな世界での現実との苦悩が、また、好調な実績を続ける内航も時代の変化とともに、スピードアップニーズとコスト増の現実への限りない対応を『顧客を中心』進める難しさが見える。

 近海部門は、昨今、使い勝手の良い近海サイ10,000型~25,000型がマーケットに次々と供給され飽和状態が解消されない。「アジアを中心に世界経済が膨張し海運マーケットが拡大するシナリオとやや違い簡単には解決しない。特に中国の成長伸び悩みが大きい。」と、高い値で新船を造り、売値が安い現実を構造的問題だと位置づけ、同社が試行する日本を起点としない三角貿易も未だ結論が出ていない。「親会社の川崎汽船とかち合う領域だけに『棲み分けを如何するか』も課題だ。現在、社員2人を出向させ、近海船の三国間展開について研究させている。」とペンディング状態だといい、「当面は顧客に迷惑をかけない形で船隊縮小、省エネの徹底に取り組み」赤字解消を目指す。

 内航部門は「北海道・本州間の運航体制の効率化、船型の大型化・省エネの実現を重点に置く。北九州・那珂港航路に北王丸を投入、輸送力を強化しました。」と、成長・拡大への期待は強い。特に、内航船は国内物流の柱であり、安全・確実に届ける安定運航が使命と考える同社にとって、最近の『その日に宅配』などの新しい現実もある。便利で好評の7時間運航の北海道航路も「荷主・トラック運転手・旅客との間に運航時間に対するニーズに違いがある。」ことを真剣に受け止め、「『急ぐ荷』・『遅くてよい荷』を混載している現実」にメスをいれる。スピードアップは燃料消費量を増やしコストアップの主要要因である。「顧客サイドに立って最適ダイヤは悩ましい」経営者の苦悩が印象に残る言葉だ。

■『変革期は知恵を絞り、やり易い時期でもある』

――時代の要請、環境の変化など顧客の不便を避けながら顧客への満足を届ける海運業経営者の言葉は、「変革期には悩みを解決へ周りも知恵を絞りますから、やりがいのある時期でもあると思っています。」で締める。

 『急ぐ荷物』・『遅くてもよい荷物』が混載する現実。『その日に宅配』など、「ニーズの多様化への対応」も、「上場以来有配を続ける実績」も、「海へのモーダルシフト」を追い続ける中に実現すると感じた。(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)

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※この記事は日本インタビュ新聞社=Media-IRより提供を受けて配信しています。

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