東北大、雌の多様性が集団の繁栄に寄与していることを明らかに

2014年7月19日 19:26

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アオモンイトトンボの雌の2種類の色彩型。雄はすべて緑色で、雌には青と茶色のタイプが存在する。(東北大学の発表資料より)

アオモンイトトンボの雌の2種類の色彩型。雄はすべて緑色で、雌には青と茶色のタイプが存在する。(東北大学の発表資料より)[写真拡大]

 東北大学の高橋佑磨助教らによる研究グループは、イトトンボの雌が多様性を持つことで、執拗に交尾を試みる雄からのセクシャルハラスメント(編注)のリスクが低下することを明らかにした。

 野外の生物は集団内の個体ごとに多様な特徴を持っていることがあるが、その機能や意義については解明されていなかった。

 今回の研究では、特に雌の色彩に関して多様性が見られるアオモンイトトンボについて、野外実験と数理モデルの両面から多様性が集団の繁栄に与える影響を調べた。その結果、雌の中にバランスよく様々な色彩の個体が存在していると、雄が効率的に雌を探索することができないため、雌一個体あたりの受けるセクシャルハラスメントリスクは低減することが分かった。また、人為的に雌の多様度を高めたところ、実際に増殖力が高まることが裏付けられた。

 本研究成果によって示された「集団内の多様性が繁栄に貢献する」という視点が、生物多様性が成立した過程を理解することや、外来種対策、生物保全対策などに繋がると期待されている。

 なお、この内容は7月18日に「Nature Communications」に掲載された。

(※編注)セクシャルハラスメント:雌の生存や繁殖に悪影響を与える雄の性的な行動のこと。昆虫類の雌は一度の交尾で充分な数の子孫を残すことができるため、一生のうちに何度も交尾をしようとすることは稀。一方、雄は交尾の回数に比例して子孫の数が増加するため、隙あれば出会った雌に交尾を試みる。このような雄の行動は、雌の産卵行動やエサ取りを妨害することが知られており、動物行動学や生態学の分野では、“セクシャルハラスメント”と呼ばれる。

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