京大、精神ストレスによって体温が上昇するメカニズムを解明

2014年6月29日 19:38

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今回の研究から明らかになったストレス性体温上昇反応を生み出す神経回路の仕組みを示す図(京都大学の発表資料より)

今回の研究から明らかになったストレス性体温上昇反応を生み出す神経回路の仕組みを示す図(京都大学の発表資料より)[写真拡大]

 京都大学の中村和弘准教授らによる研究グループは、心理ストレスを受けた時に体温を上昇させる神経回路を明らかにした。

 人間を含む多くの哺乳類は、心理ストレスを受けると体温・脈拍・血圧などが上昇することが知られており、現代社会ではストレスによる高体温など、様々なストレス疾患が増えている。しかし、このようなストレス反応による身体変化についての詳細は明らかになっていなかった。

 今回の研究では、人間関係ストレスの動物モデルである社会的敗北ストレスを与えたラットを用いて実験をおこなったところ、視床下部背内側部( ししょうかぶはいないそくぶ)と延髄縫線核(えんずいほうせんかく)という脳内2箇所の神経細胞がストレス反応の発生に機能していることが分かった。

 今回明らかになったストレス信号の神経伝達経路は、脳内のストレス信号を交感神経系へ伝え、熱の産生や体温の上昇という生体反応を生み出す基本的な仕組みとなる。実験から、この神経伝達経路は、他にもストレス性の頻脈にも関わることが示唆された。強度の慢性ストレスを受けた時には、この神経伝達経路が過剰に活性化し、心因性発熱などのストレス疾患を引き起こす可能性が考えられるという。

 研究メンバーは「今回得られた基礎的知見を発展させ、今後、ストレス疾患の根本的治療法の開発へつなげたいと思います」とコメントしている。

 なお、この内容は6月26日に米国学術雑誌「Cell Metabolism」オンライン速報版に掲載された。

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