【アナリスト水田雅展の株式・為替相場展望】目先的な過熱感で一旦は利益確定売りの可能性

2014年6月22日 21:05

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記事提供元:日本インタビュ新聞社

(6月23日~27日)

■本格上昇相場に向けて一服が必要な局面

 来週(6月23日~27日)の株式・為替相場は、投資マインド改善の流れに変化はないが、重要イベントの谷間でやや手掛かり材料難となる。目先的な過熱感を強めているだけに、一旦は利益確定売りが優勢になる可能性があるだろう。本格的な上昇相場に向けて一服が必要な局面でもあり、一進一退の展開を想定する。

 株式市場では引き続き、政府の「骨太の方針」「新成長戦略」や年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)のリスク資産運用比率引き上げへの期待感が下支え要因となる。イラク問題やウクライナ問題など地政学リスクへの過度な警戒感は後退している。米国株が史上最高値を更新していることも安心感に繋がる。需給面では高値期日を迎え、急ピッチの上昇で売り方が買い戻しを迫られている状況だ。中小型株先導から主力大型株への資金流入の動きが見られ、東証1部市場の売買代金が増加傾向を強めていることも好材料となる。

 ただし一方で、来週は重要イベントの谷間でやや手掛かり材料難となる。テクニカル面で目先的な過熱感を強めて一服が必要な局面でもあり、一旦は利益確定売りが優勢になる可能性があるだろう。特に新興市場を中心とする中小型株・テーマ関連株に関しては、一時的な手仕舞いの動きに注意が必要だろう。

 前週(6月16日~20日)の株式市場は、週初はイラク情勢やウクライナ情勢に対する警戒感などでやや軟調なスタートだったが、米FOMC(連邦公開市場委員会)声明発表とイエレン米FRB(連邦準備制度理事会)議長の記者会見を挟む18日と19日に、日経平均株価が先物主導で動意付く形となった。

 日経平均株価は18日に前日比139円83銭高、米FOMC声明とイエレン米FRB議長の記者会見後の19日に前日比245円36銭高と大幅上昇した。為替はややドル安・円高方向に傾いたが、米国株の堅調な動きも安心感に?がった。週間騰落率で見ると日経平均株価は251円58銭(1.67%)上昇して週末20日の終値は1万5349円42銭、TOPIXは24.95ポイント(2.01%)上昇して20日の終値は1268.92だった。

 売り方が買い戻しに動いたとの見方もある。また週後半には主力大型株への資金流入が観測され、東証1部市場の売買代金も19日が2兆4853億円、20日が2兆5968億円に増加した。ただしテクニカル面で見れば、東証1部市場の騰落レシオ(25日移動平均)が19日時点で143.91%、そして20日時点では151.64%となって13年5月以来の水準に上昇している。

 東証マザーズ指数は週間ベースで33.10ポイント(3.76%)上昇して20日の終値は912.50だった。また終値ベースで見ると6月19日に929.58となり、5月19日安値635.00から294.58ポイント(46.39%)上昇した。物色面ではネット関連やゲーム関連から、LINE関連、ロボット関連、バイオ関連、省エネ関連、新エネルギー関連、次世代二次電池関連、燃料電池・水素関連、カジノ関連、格安スマホ関連、不動産関連などにも広がった。ただし週後半には手仕舞い売り的な動きも見られた。

 外国為替市場は小動きだった。イラク情勢やウクライナ情勢悪化によるリスクオフの動き、ECB(欧州中央銀行)の量的緩和観測、そして米FOMC声明とイエレン米FRB議長の記者会見などでやや円高方向に傾く場面もあったが、米10年債利回りは概ね2.6%を挟むレンジで推移し、為替は1ドル=101円70銭~102円40銭近辺、1ユーロ=137円70銭~138円90銭近辺で推移した。

 週末20日の米国株は小動きだったが、ダウ工業株30種平均株価が10日に付けた終値ベースの史上最高値を更新し、S&P500株価指数は3営業日連続で終値ベースの史上最高値を更新して終了した。米FOMC声明とイエレン米FRB議長の記者会見を好感する動きが続いている。CME日経225先物(円建て)は1万5430円だった。為替は1ドル=102円00銭~10銭近辺、1ユーロ=138円80銭~90銭近辺で終了した。

 前週末20日の米国市場の結果を受けて、来週初23日は日本株、為替とも堅調なスタートとなりそうだ。その後は重要イベントの谷間でやや手掛かり材料難となるだけに、米国株や為替の動きを睨みながら、目先的な過熱感で利益確定売りが優勢になるのか、売り方の買い戻しを誘いこむ仕掛け的な買いが優勢になるのか、思惑的な動向が焦点となりそうだ。

 全体として投資マインド改善の流れに変化はなく、東証1部市場の売買代金が19日、20日と2営業日連続で2兆円を大きく上回ったことも好材料だ。しかしテクニカル面で見ると、東証1部市場の騰落レシオ(25日移動平均)が20日時点で151.64%となって13年5月以来の水準に上昇していることもあり、目先的には過熱感で利益確定売りが優勢になる可能性があるだろう。

 海外要因としては、週後半26日~27日のEU首脳会議、そして次週7月3日のECB理事会と米6月雇用統計を控えて重要イベントの谷間となる。地政学リスクに関しては過度な警戒感は後退しているが、イラク情勢とウクライナ情勢の悪化が波乱要因であることに変わりはなく、引き続き注意が必要だろう。中国に関しては、23日に中国6月製造業PMI速報値(HSBC)の発表が予定されている。景気減速トレンドは織り込み済みであり反応は限定的だろう。

 国内要因としては引き続き、政府の「骨太の方針」「新成長戦略」や、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)のリスク資産運用比率引き上げへの期待感が支援材料となる。来週後半には政府が「骨太の方針」「新成長戦略」を閣議決定して安倍晋三首相が会見を行う可能性があり、これを市場が素直に好感するのか、依然として具体性に乏しいと判断するのかが注目される。

 株式市場での物色動向としては、前週後半に新興市場での手仕舞い売り的な動きや主力大型株への資金シフトの兆しも見え始めただけに、新興市場を中心とする中小型株やテーマ関連株への物色が継続するのか、主力大型株への資金シフトが鮮明になるのかが焦点となる。主力大型株への本格的な資金流入は4~6月期の業績発表後を想定するが、出遅れ感の強い金融・不動産関連に引き続き注目しておきたい。

 為替に関しては引き続き小動きとなりそうだ。18日の米FOMCでは新規買い入れを100億ドル減らすテーパリング(量的緩和縮小)を決定したが、14年の米実質GDP成長率見通しを3月時点の見通しから大幅に引き下げたことや、イエレン米FRB議長が記者会見で緩和姿勢を当面続ける意向を示したことを受けて、米10年債利回りが上昇しにくい状況となった。

 ユーロに関してはECB(欧州中央銀行)の量的緩和観測が根強い。イラク情勢やウクライナ情勢によるリスクオフムードはやや後退しているが、ドル・円相場は1ドル=101円台後半~102円台前半、ユーロ・円相場は1ユーロ=138円台前半~139円台後半のレンジで膠着感を強めそうだ。

 その他の注目スケジュールとしては23日のユーロ圏6月総合・製造業・サービス部門PMI速報値、米5月中古住宅販売、24日の独IFO業況指数、米4月住宅価格指数、米4月S&Pケース・シラー住宅価格指数、米5月新築一戸建て住宅販売、米6月コンファレンス・ボード消費者信頼感指数、25日の日本5月企業向けサービス価格指数、独7月GfK消費者信頼感指数、米5月耐久財受注、米1~3月期GDP確報値、26日の米5月個人所得・消費支出、27日の日本5月完全失業率・有効求人倍率、日本5月家計調査、日本5月商業販売統計、日本5月全国・6月東京都区部消費者物価指数、ユーロ圏6月景況感・業況感指数などがあるだろう。

 その後は6月30日の日本5月鉱工業生産速報、7月1日の6月日銀短観、豪中銀理事会、3日のECB(欧州中央銀行)理事会と記者会見、米6月雇用統計、9日~10日の英中銀金融政策委員会、14日~15日の日銀金融政策決定会合、29日~30日の米FOMC(連邦公開市場委員会)などが予定されている。(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)

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