東京都知事選の争点が「脱原発」とは奇々怪々

2014年1月20日 08:04

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記事提供元:フィスコ


*08:04JST 東京都知事選の争点が「脱原発」とは奇々怪々
細川元首相が脱原発を掲げて東京都知事選に立候補するとのことで、東京都知事選の争点は「脱原発」となり、脱原発派が勝利するとアベノミクスに逆風が吹くとの奇妙な話が広まっている。しかし、東京都には原発は一基も存在せず、東京都知事には原発の再稼働を停止ないし拒否したり、原発を全て廃炉にする権限などは一切ない。もとより原発をどうするかは国のエネルギー政策をどうするかの問題であって、一地方自治の首長の一存で決められる問題ではない。確かに、原発が立地する地方自治においては「当該原発」をどうするのかという点は大きな争点になりうる。しかし、こと国全体のエネルギー政策という観点からすると一地方自治の選挙で国全体のエネルギー政策の当否を判断するというのは全くの筋違いだ。細川氏が「原発再稼働を一切認めない」というものを東京都知事の公約として掲げているのはいかなる意味であろうか。細川氏の後見人のような振る舞いをしている小泉元首相は「この都知事選は脱原発を進めるグループとそうでないグループの戦いだ」と述べているが、都知事選を舞台になぜこの両グループの戦いになるのかも理解に苦しむ。国のエネルギー政策は国政レベルの問題なのであるから、お二人ともなぜ国政レベルの選挙である先の衆議院選挙や参議院選挙に立候補しなかったのだろうか。
 ともあれ、小泉氏の手法は「郵政民営化に賛成か否か。反対する者は抵抗勢力」というシングルイシューで地滑り的大勝利を収めた2005年の「郵政解散」の手法を彷彿とさせる。
 その時は郵政民営化が何をもたらすのか数値等で語られることはほぼなく、そうしなければならないような雰囲気だけが大きく盛り上がった。今回の原発のケースも再生可能エネルギーでどれだけの電力をまかなうことができるようになるのかとか、原油依存が続けば日本の貿易赤字がどこまで拡大するのかといった議論はおざなりにされて、同じようなことになるのだろうか(今回は上述のように地方自治選挙の争点自体としても疑問)。東京都知事を脱原発のシングルイシューで決めていいものだろうか。ただ、民主主義のルール上、決めるのは都民であり、これまでの例からしても政治的キャンペーンが成功すればどのような結果でも生じうる。
 日本の投資家からすると、東京都知事選挙を契機に奇っ怪な政治状況が生み出されることによって、これまでアベノミクスや東京オリンピックに期待して投資を続けてきた外国人投資家の失望を招くことがなければよいが、と危惧する向きも多いだろう。《YU》

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