ダイナムJH Research Memo(5):逆風にさらされているパチンコホール業界で収益は再拡大傾向

2014年1月10日 10:25

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記事提供元:フィスコ


*10:26JST ダイナムJH Research Memo(5):逆風にさらされているパチンコホール業界で収益は再拡大傾向

■ダイナムのパチンコ事業の分析

○過去の業績の推移

逆風にさらされているパチンコホール業界にあって、ダイナムジャパンホールディングス<HK06889>のパチンコホール事業を担っているダイナムは傾向として収益を拡大してきている。ダイナムの売上高(貸玉収入)は、2006年にピークを付けた後、2009年度まで一時減収が続いた。2006年から2007年にかけての減少は不況の影響や需要構造の変化などの影響を受けたものと推測される。しかし、2008年から2009年にかけての減収は、同社が急速に低貸玉機を増加させたことによるものである。2010年以降は、低貸玉機の積極投入や、顧客にとって快適なプレイ環境を提供する施策などが奏功し、店舗数の増加とも相まって、貸玉収入が再拡大基調にある。

ダイナムグループのうち、ダイナム本体のパチンコ事業にフォーカスしてその業績推移を見ると、業界全体の事業環境に反して、極めて好調な状態にある。2013年3月期のダイナム単独の営業収入(貸玉収入から景品出庫額を引いた「遊技業収入」と物販などの「その他収入」の合計)は159,500百万円台と1%の微減となったが、経常利益は前期比7.6%増の31,600百万円と過去最高に肉薄し、経常利益率も19.8%に回復した。

全体としては好調な業績を維持しているが、一方で注意を要する面もある。ダイナム単独の店舗当たり営業収入が、長期で見れば低下傾向にある点だ。2003年3月期と2013年3月期を比較すると営業収入は13.2%減少している。この営業収入のほとんどは貸玉収入から景品出庫額を引いた遊技業収入であるため、同社が低貸玉機にシフトした影響が大きいと言える。また、顧客数の減少あるいは、顧客の消費金額の低下の影響も受けていると考えられる。経常利益では、「パーソナルシステム」の導入やPB(プライベートブランド)パチンコ機の導入などの店舗の経費節減策の徹底により、店舗当たり経常利益が底打ち反転しているのが確認できる。

○業界平均上回る収益性--低貸玉機の積極投入が貢献

ダイナムの収益力が業界全体の中でどのようなポジションにあるのかを検討するため、パチンコ稼働を比較する。パチンコ稼働というのは、パチンコ機1台当たりの1日の玉の発射数で見るが、この数値が多いほうがパチンコ機の稼働率が高いということになる。

2014年3月期上期のダイナムの玉の発射数は、24,570個と業界平均を約3,500個上回っている。過去3年間の推移を見ても、一貫してダイナムの玉の発射数が業界平均を3,000~4,000個程度上回っている状態だ。稼働率が高いという点で、ダイナムの店舗の収益力は、業界他社に比べて高いと推論することができよう。

ダイナムのパチンコホールの稼働率が高い理由としては、低貸玉機の比率が高いことが一因であろう。2012年3月末の業界平均の低貸玉機の割合は約35%であったのに対し、ダイナムは52.3%になっていた(パチンコ機だけなら58.9%)。2013年9月末現在では、パチンコ機の低貸玉機の割合は62.3%にまで高まった。

ダイナムグループは13年9月末現在、363店のパチンコホールを3業態で展開している(子会社のキャビンプラザが運営する9店を含む)。既存店と分類するのは、高貸玉といわれるパチンコ1玉4円・スロット1枚20円の機械を擁する店舗で、174店舗ある。「ゆったり館」は低貸玉機専用の業態のブランドで155店舗を展開している。「信頼の森」は時間消費型レジャーという新しいコンセプトのブランドで、低貸玉機を主体にしている点ではゆったり館と同じであるが、完全分煙店舗という点に特徴がある。これは34店舗になる。

3つの業態の主要な経営指標を見ると、貸玉収入は貸玉料の単価の違いゆえに、既存店がゆったり館などに比較して圧倒的に多い。しかしネット売上高である「遊技業収入」ではその差は大きく縮まる。貸玉収入に対する遊技業収入の比率(粗利益率)では、既存店が15.0%%であるのに対して、ゆったり館と信頼の森はともに24.1%と高い(2014年3月期上期実績)。

ただし、利益という観点では、まだ既存店の方が多い。人件費は業態による差が少ないため、遊技業収入の絶対額が小さいゆったり館や信頼の森においては、利益圧迫要因の度合いが強くなってしまうためである。

しかしながら同社自身は今後の出店はすべてゆったり館ブランド、すなわち低貸玉店で行う方針だ。消費者ニーズはそこにあるという認識なのであろう。言わば低価格戦略を進めるわけだが、それに対しては出店コストの節減、PB機導入やパーソナルシステム導入による運営コスト削減などを通じて、利益率の改善を図る方針である。


(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)《FA》

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