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【関心高まる知的資産】悩ましい中小企業の知財投資
我が国の中小企業は約400万社あると言われていますが、知財制度を活用しているのは依然として大企業が中心です。現実味のない話かもしれませんが、仮に400万社のうち1/4が年1回特許出願したとすると、年間100万件となります。日本の2012年の出願件数は34万件ですので、約3倍ということになります。ちなみに世界の動向をみますと、同年における中国の特許出願件数は53万件となり、50万件の米国を抜き世界一となりました。
知財制度は、世界的な協調政策のなかで運用されていますので、企業の規模を問わず、商売をする以上は知財に関わらないことがリスクとなります。
しかしながら、積極的に関わっても上手に活用しなければ、これもリスクとなってしまいます。
特許の話は複雑になるので、商標出願を例にとってご説明しますが、例えば、Aという中小企業が新製品を開発することにしたとします。資金力に乏しいA社は、早く新商品を発売して収益をあげるべく、社員一丸となって開発を進め、何とか3ヶ月後に発売できる目処をつけました。商品名は社内で公募し、決まったのは発売の1ヶ月前。勿論、見識あるA社の経営者は、弁理士に依頼して商標を出願。事前調査では、登録できる可能性は高いと言われ、結果を待たずして商品を発売。このような見切り発車は非常にリスキーですが、結果を予測するのも経営に資する知財戦略の一つと思った判断でした。
その後、経営者の予測どおり商標は登録に。これで安心と商品を増産。市場では独自の商品性が高く評価され順調に売れ始めました。
さて、ここまでは、さすがA社の経営者ということになりますが、その後第三者から特許庁に対し「商標登録異議申立」がなされ、結果としてその商標は取り消されてしまいました。そればかりか、当該商品名が第三者の商標を侵害している可能性が指摘され、商品名の使用は諦めることになりました。
商標制度には、このような異議申立により一旦登録となった商標が取り消されたり、無効審判請求(これは特許制度にもあります)により取り消されることがあり、決して安心とは言えないのです。
中小企業にとっては、知財政策の成否が死活問題となります。ですから、少なくとも知財コストを軽減する制度の創設が望まれます。
現政権は、参院選に向けての公約で投資減税を掲げていますが、是非とも中小企業の知財投資減税制度も組み入れて欲しいものです。(コスモテック特許情報システム株式会社 取締役 小笠原 秀征)(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)
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※この記事は日本インタビュ新聞社=Media-IRより提供を受けて配信しています。
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