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【日経平均】「日銀砲」287億発射で157円安どまり
NYダウは33ドル安。28日朝方の為替レートはドル円が94円台前半、ユーロ円が120円台半ばで円高進行。ユーロ圏の経済指標の悪化、28日正午(現地時間)のキプロスの銀行の営業再開での混乱懸念、イタリア国債の格下げやECBの利下げの噂などが重なりユーロ売りが止まらない。それでも日経平均は36.33円安の12457.13円と小安く始まったが、午前9時30分頃からズルズル下落が始まり12400円を割り、前引けでは12300円をも割り込んだ。イタリアで連立協議が難航して再選挙実施観測が浮上したこと、キプロス問題に振り回された前週の株式市場で海外投資家が19週ぶりに売り越しと発表されたこと、日本は株主権利確定イベントを通過して年度末最終取引日の前日という狭間、欧米は3連休前と日柄も悪いこと、まるで開戦前夜のような北朝鮮の過激発言により地政学的リスクも意識されたことなどが下げ要因として挙げられた。
後場に一時、下落幅が200円を超える場面もあったが、その後は持ち直して12300円台を回復。TOPIXの前場終値が前日比1%を超える下落になり、日銀が後場にTOPIX連動型ETFを買い入れる「1%ルール」を発動して287億円を投入したおかげで後場の日経平均は底堅く推移した。株高が続いたため忘れている人もいそうだが、この通称「日銀砲」は1月16日、2月15日、3月18日にも発射されている。ちなみに黒田総裁はかつて為替のほうの日銀砲の「伝説の名砲手」で、円高を何度も粉砕している。日銀の〃援護射撃〃のおかげで日経平均終値は157.83円安にとどまり12335.96円、TOPIXは-9.69の1036.78だった。売買高29億株、売買代金2兆1803億円と商いは持ち直した。
プラスは電気・ガス、小売、保険の3業種のみ。マイナス幅が小さいのは食料品、情報・通信、ゴムなどだった。マイナス幅が大きいのは海運、石油・石炭、鉱業、卸売、非鉄金属などだった。
先物主導で大型株中心に売り込まれたこの日、円高で輸出関連銘柄は全面的に下落。自動車はホンダ<7267>が60円安、トヨタ<7203>が75円安、マツダ<7261>が9円安で、自動車部品のデンソー<6902>も110円安。自動車のワイパーモーターを製造するミツバ<7280>は3月期の業績予想を7期ぶりの最高益更新に上方修正し、前場は一時61円高で昨年来高値を更新しながら、その後は利益確定売りで89円安になり値下がり率3位に入るという目まぐるしい1日だった。
ハイテク系も大引け後に中期経営計画発表を控えたパナソニック<6752>が4円安、ソニー<6958>が50円安、シャープ<6753>が10円安、京セラ<6971>が260円安、キヤノン<7751>が75円安、東京エレクトロン<8035>が80円安、アドバンテスト<6857>が53円安、TDK<6762>が70円安と不振をきわめたが、その中でクレディスイス証券が目標株価を引き上げた三菱重工<7011>が15円高と買われたのが目立った。
上海市場は中国での不動産規制の問題が蒸し返されて軟調になり、中国関連銘柄のファナック<6954>が350円安、コマツ<6301>が49円安、日立建機<6305>が32円安と揃って下落。東証REIT指数が6日ぶりに反落して3%を超える下落幅を記録し、不動産銘柄の上昇もひと休み。三井不動産<8801>は52円安、三菱地所<8802>は30円安、住友不動産<8830>は80円安だった。
このところ「円高の日は小売の日」になる傾向があり、業種別でも小売業は数少ないプラス。不動産銘柄の不調の影響か百貨店は軒並み下落し、ファーストリテイリング<9983>は220円安だったが、セブン&アイHD<3382>は30円高。前日は値下がり率2位に沈んだダイエー<8267>は一転、一時ストップ高の56円高で値上がり率1位と急反発し、前日の下落分を取り返し25円のおつりがきた。連想買いでマルエツ<8178>も19円高と買われたが、ダイエーを買収するイオン<8267>は10円安。専門店では良品計画<7453>、靴のチヨダ<8185>、薬のサンドラック<9989>、外食でもカレーショップの壱番屋<7630>が物色されてともに昨年来高値を更新した。アサヒGHD<2502>、キリンHD<2053>、キッコーマン<2801>、ニチレイ<2801>など食品大手も株価を上げている。高級旅館・ホテルの予約サイトを運営する一休<2450>が昨年来高値を更新し値上がり率7位に入ったのは、ゴールデンウィークのレジャー関連の活況ぶりを予感させる。
ソフトバンク<9984>は55円高で4日続伸と好調が続く。KDDI<9433>が75円高で、NTTデータ<9613>、ヤフー<4689>も上昇し情報・通信セクターは悪くなかった。ディフェンシブ系の代表格の地銀大手は横浜銀行<8332>が7円高、千葉銀行<8331>が4円高、静岡銀行<8355>が8円高、ふくおかFG<8354>が7円高と堅調で、みずほ<8411>が5円安、三菱UFJ<8306>が値動きなし、三井住友FG<8316>が40円安の三大メガバンクとは好対照だった。
安倍内閣が2018~2020年度をメドに発送電分離を来週閣議決定する見通しになっても内需系ということで電力株は買いを集め、10電力で下落は9円安の中部電力<9502>だけで、東北電力<9506>の34円高、沖縄電力<9511>の30円高が目立った。東京電力<9501>は5円高で売買高8位。地域経済活性化支援機構による再建策が発表された中山製鋼所<5408>は一時24円高になったが、終値は4円高だった。
この日の主役はGSユアサ<6674>と三菱自動車<7211>。ボーイング787のバッテリーの問題は運航再開に近づいているが、今度は三菱自動車にGSユアサが供給しているバッテリーに不具合が生じて49円安で値下がり率ランキング1位。三菱自動車も4円安で、両銘柄は売り浴びせられ売買高9位、10位に入った。三菱自動車水島工場で完成検査中に充電していた電気自動車(EV)「アイミーヴ」のバッテリーパックが発火し、プラグイン・ハイブリッド車「アウトランダーPHEV」のリチウムイオン電池も過熱して溶けるというただならぬ事態が起き、三菱自動車は前日、急きょ販売を停止してユーザーに充電しないように呼びかけた。バッテリーパックの製造元はGSユアサ、三菱自動車、三菱商事<8058>が設立したリチウムエナジージャパンという会社で、とばっちりで三菱商事も42円安になった。自動車用部品は量が出るだけに、旅客機とは比較にならないほど業績へのダメージが大きい。それにもまして、「アイミーヴ」「アウトランダーPHEV」という将来の期待を背負ったエコカーの量産ラインで起きた出来事だけに、三菱自動車にとっても影響は深刻だろう。(編集担当:寺尾淳)
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