例年になく話題の多い今年の特許訴訟

2012年12月17日 11:00

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記事提供元:エコノミックニュース

 アップル対サムスン、アップル対HTCなど、スマートフォンやタブレット端末に関する特許訴訟が世界的に注目を集めた2012年。日本もその訴訟の舞台となり、結果や予測が大きく報道がその裏で、大きく取り扱われることは少なかったものの、日本企業同士の特許訴訟も多く行われていた。

 先日比較的大きく報じられたのが、セガによるレベルファイブ提訴であろう。訴訟の対象はレベルファイブの人気サッカーゲーム「イナズマイレブン」シリーズに採用されている、タッチスクリーンを使ってキャラクターを操作する技術。この提訴に対しレベルファイブは、セガの特許を侵害していないというだけでなく、今後のゲーム制作の選択の幅を制限し、ひいてはゲーム産業の発展を阻害するものであるとして真っ向から対抗する構えである。同社によると、セガの特許は同社が「イナズマイレブン」の第1弾を2008年8月22日に発売して以降の、2009年2月20日及び2011年8月26日に成立しており、ゲーム発売後に成立した特許に関しての特許使用料の要求、及び、訴訟の提起を受けたことになるという。すでにタッチスクリーンは普及しており、一般的な操作ともいえる。また、セガ特許と同様の処理をするゲーム及び特許は、セガ特許の出願前から現在に至るまで複数存在しているというから、この訴訟の行方次第でゲーム業界の動向が大きく変わるかもしれない。

 最近では日清食品ホールディングスおよび日清食品も、サンヨー食品および太平食品工業を相手方として、サンヨー食品のサッポロ一番などの一部製品について特許権侵害訴訟を大阪地方裁判所に提起。侵害行為の差止と2億6652万円の損害賠償を請求している。訴訟の対象となっているのは「ストレート麺製法」。即席麺は製造効率の関係で麺にウェーブを付けざるを得なかったものを、湯戻し時に麺同士がきれいにほぐれ、喫食時に真っすぐになる即席麺の大量生産を可能とした製造技術である。同社はかねてからサンヨー食品と交渉を続けていたものの解決を見なかったというから、この訴訟は長期戦となるかもしれない。

 また、日本企業間での特許訴訟で最も有名な訴訟の一つ、切り餅の「切り込み」に関する越後製菓対佐藤食品の争いが終結したのも今年である。その他、紙おむつの立体ギャザーの構造に関する特許及び紙おむつのお腹周りの弾性伸縮部材の配置に関する特許に関し、平成22年に大王製紙がユニ・チャームを相手に提起した特許権侵害損害賠償請求も、今年11月30日に東京高裁が請求棄却の判決を下す等、大企業が絡む特許訴訟に関する訴訟の話題が多くみられた。

 日本の知的財産権訴訟件数自体は、近年急激に増加しているわけではない。しかし、中国企業による日米欧中韓への特許出願件数が、2010年には日本を、2011年には米国を上回った。何かと問題の多い国であるだけに、今後は特許権数に比例して訴訟も多くなるであろう。また特許権に限らず、中国にて無審査に登録される実用新案権は、その濫用が懸念されている。実際、2009年3月には実用新案権を侵害したとして中国企業がフランス企業の中国合弁会社を訴え、北京市高級人民法院が中国企業の訴えを認める判決を下し、フランス企業側が約20億円もの和解金を支払わされる事態も発生している。日本企業は、特許取得や商標登録などに満足するのではなく、その先の対策・戦略まで含めた取り組みを加速させる必要があるのかもしれない。

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