大日本印刷と東大、世界最速級ブックスキャナーを開発 1分間に250ページ

2012年11月19日 11:17

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大日本印刷と東大が開発した世界最速レベルのブックスキャナー(画像:大日本印刷)

大日本印刷と東大が開発した世界最速レベルのブックスキャナー(画像:大日本印刷)[写真拡大]

  • 書籍画像の3次元補正 イメージ(画像:大日本印刷)

 大日本印刷は19日、東京大学石川正俊教授と渡辺義浩助教の研究チームと共同で、1分間に250ページの速さで紙の書籍を撮影して画像データとして保存できる世界最速レベルのブックスキャナーを開発したと発表した。

 昨今電子書籍の利用が進み、過去の資料の電子的保存やWeb上での公開が進むなか、既存の書籍や書類の電子化の必要性が急速に高まっている。一方、従来のブックスキャナーは冊子体を裁断してシート状にする必要があり、作業時間を要していた。また、冊子体のままでのスキャンができる場合でも、スキャン時に文字や絵がゆがまないように紙面を平坦な状態にする必要があるため、読み取り速度が十分ではなかった。

 今回開発したブックスキャナーは、機械による高速ページめくりと、リアルタイムで実行される書籍の3次元状態認識技術、さらに高速のゆがみ補正アルゴリズムを導入することにより、冊子体のままで電子書籍の要求解像度での高速スキャンを実現したもの。

 今回、高速のページめくり装置を新たに開発することにより省力化と高速化を実現。ページめくりの機構が撮像の邪魔にならないように設計したことで、同ブックスキャナーでは冊子体を裁断することなく1分間に250ページの高速スキャンを実現している。つまり、250ページの本であれば1冊を1分で電子化できることになる。

 さらに、同ブックスキャナーは、ページをめくるときに生じる紙面の3次元形状を1秒間に500回の速度で捉え、最も高品質に電子化できる瞬間を新たに開発した独自のアルゴリズムに基づいてリアルタイムに識別する。識別された瞬間に高精細カメラによる撮像を行うことで高速かつ高精細な電子化を実現している。これにより、解像度を1インチあたり400画素まで高めることに成功し、電子書籍での利用を可能とした。この技術によって、独自に開発した高速ページめくり装置の速度でも全てのページを見逃すことなく高精細で高品質な電子化が可能となる。

 また、同システムには、撮像された画像と同時に取得した3次元形状を用いて、変形する前の平面の書籍画像に復元する独自の補正技術を備えている。今回、東大の研究チームで既開発の同処理作業の効率化と並列化を図り、撮像と同時に補正できるシステムを開発した。今回の実用試作機では、演算処理装置がフル仕様でないため補正のスピードは1分あたり120ページとなっているが、フル仕様ではさらなる並列化により1分あたり250ページの補正が可能。

 大日本印刷は、今回開発したブックスキャナーを自社工場に導入し、図書館蔵書等の書籍電子化サービス向けに2013年度中の実用開始を検討している。また、ブックスキャナーの外販についても今後検討していく。

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