ITカーズ、世界初の水素エンジン自動車を発表 水素とガソリン混合を実現

2012年9月25日 21:34

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世界初となる「ガソリン混合水素エンジン」自動車の発表記者会見の様子(写真:ITカーズ)

世界初となる「ガソリン混合水素エンジン」自動車の発表記者会見の様子(写真:ITカーズ)[写真拡大]

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 自動車業界をはじめ様々な分野で戦略的情報システムを提供しているITカーズ株式会社(本社:東京都千代田区神田)は25日、世界初となる「ガソリン混合水素エンジン」自動車へのコンバージョン(機能変換)キットを発表し、車検をクリアした搭載車を報道陣に公開した。

 この世界初となる「ガソリン混合水素エンジン」へのコンバージョンキットは、東京都市大学(旧・武蔵工業大学)の総合研究所水素エネルギー研究センターの山根公高准教授の助言のもとにITカーズにより開発されたもの。新エネルギー、環境対策の視点から次世代自動車の動力源について、これまで100年余の技術蓄積を有する内燃機関とするか、モーター系の電気自動車や燃料電池車(FCV)にするかについて国際的な議論を呼ぶ中で、今回発表された世界初となる「ガソリン混合水素エンジン」は新たなソリューションを実証することとなった。

 今回ITカーズが開発した世界初となる「ガソリン混合水素エンジン」自動車へのコンバージョンキットの特徴は、世の中に出回っている自動車の大部分を占めているガソリンを主燃料とする内燃機関車が、同コンバージョンキットを組み込むことで、環境に負荷の無い水素による走行が可能となること。

 同ガソリン混合水素エンジン自動車は、ガソリン単独と水素とガソリン混合モードでの走行が可能。モード切り替えは最適化プログラムにより自動的に行われ、パワーとレスポンスの低下を防ぎ、段付きの無い燃料の入替えを可能とするなどの特長を持つ。

 同ガソリン混合水素エンジン自動車に採用した開発車種は軽自動車(スズキワゴンR直噴インタークーラー付きターボエンジン)。なお、最も小型である軽自動車で利用できればすべての車種に適用可能だという。出力は改造前の能力と同等、燃料消費は改造前と同等かそれ以上。排気性能は水素運転時は完全にクリーン。水素+ガソリン時はガソリン車以上のクリーンさとなる。使用燃料は水素およびガソリン。

 使用方法は水素燃料単独(都市内での通常走行)、ガソリン単独(水素がなくなった場合や水素を入手できない場合に用いる)、水素・ガソリン併用(追い越しなど高負荷運転時に用いる)の3通り。走行距離は開発車に搭載している35MPa高圧水素容器(1本)で約150km(高速道路を走行した場合のデータ)。ガソリンで350km、両燃料を合わせると500kmの走行が可能。運転方法は改造前と同じで完全オートマチックとなる。

 今回の発表について、山根博士は、「内燃機関を利用した水素エンジンは、今までの熟成した技術を利用し、低コストで、大きな技術的問題を抱えることなく生産できる唯一の方法であることを実証できた」と語っている。山根博士は日本における水素自動車の研究・開発で40年のキャリアをもつ第一人者で、既に試験車では乗用車などの開発に携わってきた。

 ガソリン混合水素エンジンの実用化に向け、コンバージョンキットの開発で中心的役割を果したITカーズ技術部長の今井作一郎氏は、「2009年より山根博士の助言を受け試作に取り組んだ。技術的に一番難しいコンパクトな軽自動車を開発車に選んだ。これに成功すれば、すべての車種への組み込みは容易になる」と述べている。なお、今井氏は、1998年のパリ・ダカールラリーにおいて市販車改造ディーゼル・クラス(T2-2)で2回目の参戦にして見事クラス優勝を遂げた伝説のエンジニア。

 昨年1月、経済産業省と民間企業(自動車メーカー3社とエネルギー事業者10社)が、水素を燃料とする燃料電池車の普及水素燃料のインフラ「水素ステーション」の整備に共同で取り組み、2015年までに東京、愛知、大阪、福岡の4大都市圏で100箇所程度を先行的に設置する旨の共同声明を公表している。今回発表されたガソリン混合水素エンジン自動車は水素供給・利用技術研究組合(HySUT)の承認を受けており、燃料電池車用のインフラを共用することが可能であるため、今後水素ステーションが整備されることで早期の実用化も見込まれる。

 今後、ITカーズは、「ガソリン混合水素エンジン」自動車へのコンバージョンキットの普及化のため、関連企業との事業提携をすすめていく方針。

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