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与謝野大臣が「大震災後の日本経済と原発政策」について語る
今回の大震災発生直後に、その経済への影響について「岩手、宮城、福島の3県のGDPを全部足しても4%、この程度の被害で日本経済がどうこうなるということはない」という内容の発言をして物議をかもした与謝野馨・経済財政担当大臣。[写真拡大]
【「霞ヶ関発・兜町着」直行便】
今回の大震災発生直後に、その経済への影響について「岩手、宮城、福島の3県のGDPを全部足しても4%、この程度の被害で日本経済がどうこうなるということはない」という内容の発言をして物議をかもした与謝野馨・経済財政担当大臣。被害の拡大が深刻になってきた15日の定例記者会見では、「失言」の挽回を図るかのように、「株価暴落」「市場閉鎖論」「原発政策の見直し」「景気認識の修正」「復興増税」「日銀の金融緩和」などについて、長時間にわたる質疑応答に応じた。菅首相や枝野官房長官が、被害対応に終始するだけで、ほとんど有効な「政治的見解」を述べていない中、まとまった発言と見た。
(問)株価が9,000円を割り込んだ。この麻痺が非常に長引くのではないかという見通しの下に株が売られていると思われるのが。
(答)今は混乱期でございます。政府としても、被災地の人命をいかに救助するか、あるいは避難されている方の食料、水、医療をどうするかということに加えて、想定していなかった福島の原子力のああいう状況と、2つのことが最も大事になっていまして、政府全体としては経済のところに、目はまだ行っておりません。日経平均が落ちているのは、それだけ悪い材料があるからでございますけれども、基本的には日本の生産力、あるいは経済力というのは落ちているわけではありませんので、市場の混乱は私は短期間で収束すると思っております。
ただし、停電の影響というのは、一般家庭だけではなく、広く経済界にも及ぶ可能性もありますし、働く方々が職場に行くということも、非常に困難を伴うという状況ですので、願わくば東電の持っている火力等が津波の被害から一日も早く立ち上がりを見せるということを、今は期待をしております。
(問)株式市場などを閉じてもよいのではないかという議論出ているが。
(答)まったくありません。災害は、確かに2つの大きなものが起きていますけれども、その他の日本の経済は動いているということが大事であって、東京の市場というのは日本だけのためにあるのではなくて、世界経済の一翼を担った大事な市場なので、その市場の機能を停止するということは、国際的な影響が大きいということを考えれば、むしろ市場を開いて通常の活動をやっていくということが、国際的な責任を果たすことでもあると思っております。
(問)福島第1原発が非常に危機的な状況だが、これが日本経済に与える影響は。
(答)これは、心理的な影響が1つ。それから、日本の全体の経済、工業力、産業力に対して、皆がマイナスの視線を向けるという点では非常に残念なことになると思いますけれども、しかし、いずれ克服できる困難でありますので、今は起きた状況がもたらす被害を最小限にするということに、最大限の努力を注入しなければいけない時期だと思っております。
(問)日本社会と日本経済にとって、今、最大のリスクは福島の原発問題ではないかと思うが。
(答)1つは、既にある原発に対して国民がどう考えるかという問題。それから、エネルギー供給構造の脆弱性を持っている我が国にとって、新しい原発を建設することに関しては、これから大変な困難と時間がかかるというエネルギー問題としての原発という両面、非常に私は心配しております。さらに海外で原子力をやろうといった国々、こういう国々の原子力に対する考え方がどうなるかということは、世界のエネルギーの需給構造に重大な影響を与えるということで、1つ、日本の問題だけではなく、世界に与える影響というものは非常に大きいと思っております。
(問)原発は、もうそろそろ見直すべきなのではないか。
(答)1964年にジュネーブで原子力の会議が開かれたときは、50年後には高速炉の実現、あるいは核融合の実現ということが語られていたわけですが、高速炉で研究が行われているのは、今や日本だけになった。核融合の研究もまだまだ時間がかかるということで、結局は大量のエネルギーを確保しようと日本が考えるとすれば、他の代替エネルギーがない我が国経済、我が国の国民の生活を支えるためには、原子力を利用していくということは避けて通れない道だと思っております。その点のエネルギー使用というのは、国民の皆様方にも御理解いただかないといけない。さらに日本では人口が減っていますれども、世界的な人口増、あるいは世界の方々の経済生活のレベルが上がっていくということで、例えば原油などの消費量というのはますます増えていくという状況の中で、日本がこれにどう対応するかというエネルギー、資源問題というのは、政治にとっても日本の経済にとっても、これから最大の私は問題になると思っております。
(問)今月の月例経済報告では、景気認識を下方修正することになるのか。
(答)昨日、齋藤統括官には、月例報告では、現在までの過去の数字に基づく統計によって日本の経済を分析、解析するということではなくて、むしろ国民が関心を持っているのは、政府として、今後この大震災、原子力事故がどういう影響を国民経済に与えるかと、将来分析をやらないと月例の役割を果たせないということを申し上げておきました。話の重点は、この大きな災害の、大きな事故の、日本の将来の経済に対する影響の分析が重点的に話される予定になっております。
(問)今回の災害復興の財源捻出のために、一部で増税論が出ているが。
(答)そういう発想をする方がおられるということは聞いておりますけれども、そこは問題の本質ではないと思っております。それは、お金の集め方が、今回の色々な対策の本質ではない、ということです。
(問)日銀の金融緩和対応をどう評価するか。
(答)史上最大の金融政策を日銀はとっているということで、日銀の言葉を借りれば、これらの日銀の金融政策というものは、日本の経済が悪くなっているからやっているのではなくて、市場にいたずらな不安が広がることを防ぐと、そういう意味で日銀は幾らでも金融政策的な側面から今の状況を支えるという強い意思表示をしているということでございます。
菅首相や枝野官房長官が、被害対応に終始するだけで、ほとんど有効な「政治的見解」を述べていない中、重要閣僚として、この時期、まとまった発言と見ていい。特に原発に関しては、若い時分に原子力研究所に勤務していただけに詳しいし、一家言持っている。だが、そうはいっても今後の日本経済の展望に関する中味は何も出ていない。「東北3県、GDP4%論」程度の認識では、とてもこの経済的苦境を乗り切る政策を、この人に委ねるのは無理かもしれない。(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)
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※この記事は日本インタビュ新聞社=Media-IRより提供を受けて配信しています。
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